前回、「保険について考える際に最も重要なのは必要保障額の算出である」とご紹介しました。
今回はこの「必要保障額」についてもう少し詳しくご説明します。
保険を見直して、家計をリストラしましょう。
シミュレーションの値を現実値に近づける
保険ショップ等で作ってくれる必要保険額や各種のシミュレーションは、
統計上の全国平均催を使って計算されます。
しかし、「平均」とはあやふやなもので、極端に大きい数値や小さい数値が混じると、
その値はすぐに変動してしまい、現実的な標準値とは大きくかけ離れてしまうことも多いのです。
平均値を使ったシミュレーションのままでは、
本当の必要保隊額が不足したり、逆に多すぎて保険料の無駄が生じたりする可能性が
大いに出てきますので、自分の家庭の状況に合わせて考える必要があります。
特に、地域格差を含め、家によって誤差が大きくなるのは教育費。
習い事と併せ、お金の面から予定を書き出し、「どのように育てたいか」をはっきりさせます。
そのポイントは、学校と習い事(塾を含む)を別々にすべて書き出し、目に見える表で確認すること。
平均値と自分の家庭の実態の差がどのくらいなのかを考えてみましょう。
(1)学校教育費
公立校選択の場合は平均値でOK。
私立校選択の場合は現時点念頭においている志望校の学費を調べ、
通学費など諸雑費も考えましょう。
(2)学校外教育費(塾を含む)
いつまで習わせる予定なのかを明らかにすることで、今後の教育方針が見えてきます。
生活費も教育費も、一つひとつを積み上げて計算するのは確かに大変。
しかし、自ら調べることで本当に必要なものが見えてきます。
保険外交員が一般的なデータを提示するのは、個人的状況を把握しにくいという事情があるから。
自分が必要とする保障を明らかにして相談すれば、これまで以上に適切なアドバイスを受けられます。
必要保障額=「予想支出額」-「予想収入額」
それでは「必要保障額」を計算してみましょう。
これは家計を支える稼ぎ手の死後、遺された家族の「予想支出額」から「予想死守t額」を引いた金額を
指します。
(1)「予想支出額」の出し方
生活費・教育費・結婚援助費用・葬儀費用の4つに分けて考えます。
A. 生活費:遺された家族の日常生活を維持するためのお金。
末子が独立するまでと、それ以降の2段階で考えます。基本は現在の月間生活費を基準にするので、
食費・光熱費・被服費などの毎月の支出がいくらかを算出しましょう。
末子が独立する(大学を卒業する22歳)までは、算出した現在の生活費の7~8割を
家族の生活費と考えます。
(実際は子どもの成長と共に支出も増えますので8割で考えておくことをお勧めします)
末子が独立した後は、妻一人の生活費になりますが、現在の生活費の半分にはならないので
6~7割で平均寿命までの生活費を計算します。
B. 教育費:全国平均値から一番乖離しやすく、家庭ごとに最も差が出る費用。
現状から今後の支出予測を立て、表にしましょう。
学校・習い事それぞれにかかる金額を年額で算出します。
全部をまとめて計算するのではなく、習い事の一つひとつを書き出すことで、
目標をどこに設定するのか、いつまで続けさせるのか、というビジョンが見えてきます。
C. 結婚援助資金:最近は披露宴を行わないケースや会費制など
お金をかけないケースも増えていますが、
子どもは「必要ない」と考えていても、親が望むのなら(口を出すのなら)
それなりの援助は念頭に置いておきましょう。
D. 葬儀費用:コロナ禍の影響もあり直葬や家族葬が増えましたが、
予想以上に費用がかかり、まとまった金額になるので、あらかじめ準備が必要です。
突然の事態がやってくると思わぬ高額の出費になることもありますが、普段から予備知識を
蓄えておけば、ほぼ平均値で問題ありません。
普段から情報収集をして、いざという時の心の準備をしておきましょう。
A~Dを合計すると予想支出額の合計が出ます。
その金額だけをみると驚いてしまうかもしれません。でも安心してください。
入ってくるお金もありますからそれを差し引きして最終的な必要保障額を算出します。
(2)「予想収入額」の出し方
主に、国の保障、会社の保障、現在の貯蓄、配偶者の収入の4つに分かれます。
E. 国の保障:遺族基礎年金・遺族厚生年金・中高齢寡婦加算・老齢基礎年金ですが、
厳密な数値を出すには計算が必要です。
インターネットのシミュレーションサイトを参考にして活用してみるとよいでしょう。
F. 会社の保障:死亡退職金。
勤め人の方は人事課か労働組合で確認できます。
死亡退職金の他にも、育英費や埋葬費といった名目で弔慰費が支給される会社もあるので、
併せて確認しておくと良いでしょう。
G. 現在の貯蓄:現時点で、家計にどれだけの貯蓄があるのか正確な金額を把握しましょう。
H. 配偶者の収入:妻が就業する場合の収入。
夫に不測の事態が発生した時は、妻が家庭を支えていく気構えとスキルアップを
普段から心がけておくことはとても大切。
(離婚リスクも考えると、なるべく離職しないで自分の仕事を持ち続けることは非常に重要)
しかし、子どもを買掛けてたった一人で仕事と家庭の両立を図ろうと思っても、
なかなかすぐに良い仕事がみつかる(復帰できる)わけではありません。
「何かあったら自分が支える」という意思を持ってはいても、
実際には働けないというリスクを想定して、ここは「0」またはなるべく少なく
見積もっておく方が無難だと思われます。
予想収入額もEからHを加算して合計額を出します。
これを先程の予定支出額から差し引きすると必要保障額が算出されます。
イオン有料会員誌『MOM』掲載記事を加筆修正 画像:beauty-box(写真AC)
保険ですべてをカバーできるわけではありません。
預貯金が少ない間、子どもが小さい間の保障はとても重要ですが、
保険だけに頼らず、同時に、貯蓄とつみたて投資で資産形成に励むことも必要です。
ライフステージが変わるタイミングで、資産が増えていたら、少しずつ保障額を下げていきましょう。
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